子どもたちは本当に大変な時代を生きていると思われます。日本の子育て文化は崩れつつあり、人間関係の希薄化、母子の孤立、仮想世界の台頭、虐待など、子どもが育つ環境は悪化の一途を辿っています。
子どもたちの20、30年後の姿を想像することもよくあります。おとな達の中(我々のこころの中)にも、常に子どもがいます。大事にされた経験、世話をされた経験、人の優しい温かい情に触れた経験があるかどうかが、その人の人となりを作っています。もちろん、苦労や耐え難い経験も同じです。それらが、今のおとなを見ていても、子どもをみているときと同じように、心に迫ってきます。この子たちが大人になった時も、幸せな子どもをこころの中に宿している大人になってもらえればと思います。そうすれば、次の世代の虐待も不登校も格段に減るでしょう。反対に、悪化が続けば悲惨なことになると思っています。
おとなから変わるべきですが、もちろん、その人なりに頑張ってきた方の人生に口を出すなどできません。でも、子どもにはすべてのおとなが責任を持つべきであり、そうありたいと思っている自分がいます。
根本から変わるには、浜松市の地域から教育を支えていこうと、日々子どもたちと向き合い関わっている有志が集まり勉強会が立ち上がりました。その中から地域で子どもや教育を支える実効的なネットワークを構築していく必要があると考え、平成27年にNPO法人を設立しました。子どもたちの主要な生活の場は学校です。人とつながって生きていく基盤ができるときです。昨今、コミュニティスクール等と言われるようになってきました。つながるという基本を実践できる、本質から子どもたちと向き合う制度に成長していってほしいと願っております。その一翼を担えればと思っております。
平成30年度より浜松市から「校外まなびの教室」の運営を委託され、市内10カ所の教室の運営を行っています。不登校児童生徒が将来社会人として豊かな人生を送っていくことができる力が育まれるように活動しています。悩んだり行き詰ったりした人ほど、しっかりと救われる必要があります。行き詰った時に人の温かさに触れた時に、人は救われ、反対に人を救える人になっていきます。そういう実践の場になることを願って、関わっております。子どもたちと向き合った人の人間性が子どもたちに伝播していきます。教育とは、そういう素敵な相乗効果が起こる場だと思います。
子どもたちに関わる保育士や教員の子ども理解をすすめるために「ピンポイント研修会」や「事例検討会」などの人材育成・研修会を実施しています。お互いに切磋琢磨することが最も大事だと思っています。それが、子どもとかかわるときのおとなの礼儀だと思います。
社会が複雑化し、価値が多様化する中で子どもたちや保護者が抱える問題も様々に多面化しています。その子どもたちや保護者を支えていくためには、皆さんと協力していくことが必要だと思います。子どもたちや保護者がもつ問題に対して、様々な視点や知恵によって支えていけることは大切なことであると考えています。
また、我々自身が常に「つながる」ということを実践することが大事だと思っております。つながるということは、我々の本質の目標でもありますが、決して心地いいばかりではありません。同じように思っても実は微妙に食い違いがあったり、もともとかなり性向が違っていたり、意見の食い違いが起こるかもしれません。それらを乗り越えてつながるということが、子どもに対しても何か伝えられるのではないかと思っています。ただ、子どもの幸せを願うという一点では、皆で共有できると思っております。
NPO法人はままつ子どものこころを支える会
(すまいる)
代表理事 大嶋 正浩